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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页
禰宜様宮田は、近所の誰彼が、
「まあ、へえ、よし坊は十円け? よっぱら割がええなあ、俺らげんなあお前んげと同じい年でも、いまちいっとやせえわ。
まちっと相場あ見てっと得したんだになあ」
などと云っているのをきいた。
もう十六と十三になっている彼の娘達は、勧誘員が来ると一緒に、そのさもいいことずくめらしい言葉から多大の好奇心をそそられた。
何というあても決心もない。
ただその多勢でそろいの着物を着て、唄をうたいながら糸をとるということがして見たいのである。
町の工場で働く。そこに何かここにいてはとうてい得られない名誉と幸福があるような気がする。
友達だった娘が行くことにきまったなどと、さも嬉しそうに誇らしげに告げると、二人は妙に後れちゃあ大事だという心持になって、こっそり納屋の蔭や、畑の隅で相談する。
大業に相談するとは云っていても、事柄は簡単なものである。
「さだちゃんよ。
こんねえだ俺ら、新やん家で聞いたけんど、工場さ行ぐと、毎日毎日牛ばっか食わして、衣裳までくれんだって……
俺らこげえな貧乏家にいるよら、何ぼかええと思うなあ。
お前どう考える?
阿母ちゃんさきいてんべえか……」