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しゅうさいようしかがみ
秀才養子鑑
佐々木 邦
「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,837 字 · 32 页
これはこの仲間丈けでも申合せれば実行が出来る。
岸井 一つやろうか?
小室 やり給え。専売権を両方から三割宛徴集するぞ。
一同 ハッハヽヽ。(拍手喝采)
井上 次は病気療養法。小室君、何うするんだい? これは。
座談会は倶楽部の一室で催されていたが、カーテンの陰に小さなマイクロホンが匿してあって、その線が婦人社交部の一室に通じていた。橘会の連中の奥さん達も時折会合する。その晩は懇親会を兼ねて、バザーの相談会をやっていたのである。山の社交はこの人達が大きな動力だ。
「今晩は余興として主人方の座談会の放送がございますよ」
と井上夫人が発表したから、一同期待していたのだった。それが今や極めて明瞭に聞え始めた。放送局でやるように人別の説明はないが、主人の声は奥さんに分る筈だ。忽ち小室夫人が血相を変えて立ち上った。
「私……」
「まあ/\、奥さま」
「あら/\/\、あんなこと申しています」
「奥さま、奥さま」
「主人の奴、何うするか覚えて……」
「まあ/\/\/\、奥さま」
と奥さん達が抱き止めている中に、雪子夫人は卒倒してしまった。
翌日から小室君の欠勤が続いた。
(昭和十四年四月、現代)