轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

03 みなかみ帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 页

青空文庫

「俊基の身代りにか」

「一とき、ここの囲みを解くためにです。……が、すぐに、それは弁ノ殿に非ずと敵もさとるでしょう」

「いまのうちです」

豊麻呂も一しょに急いた。

「すぐ、ここを脱け出て、荷舟の底に隠れ、堀の水門から川ノ辻へお落ち下さい。さ、さ。一刻のまもお早く」

いまは何を訊き返している暇もない。

せかれるままに、俊基は土倉を出て、堀の方へ走ッた。

一そうの荷舟がある。菊王が先へ飛び乗り、つづいて、俊基も手をとられて、苫の下に体を隠す――。出屋敷の浪人七、八名は、後ろ向きに立って、四方へ眼を光らし合った。

豊麻呂が、繋綱を投げた。

「では、先々とも、お心つけて、首尾よう御使いをお遂げなされませ」

「おう、さらばだ」

俊基は、苫の蔭から、忙しない別辞を返す。

「もう案じるな。ここが助かるような身の武運なら、先々とても、首尾はよかろう。豊麻呂、いずれ帰洛のうえには、都からよい沙汰するぞ」

菊王は、棹を取って、すぐ岸を突いた。

そこらにあった腰蓑をまとって、散所者の舟人に似せた姿も、それらしい。たちまち出屋敷の水門を離れ、舟は一と筋の川へ泛かび出ていた。

いや、この辺は、水の静脈動脈だった。