轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんのゆうしゅう

秦の憂愁

豊島 与志雄

「文芸」1944(昭和19)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,389 字 · 19 页

青空文庫

星野武夫が上海に来て、中国人のうちで最も逢いたいと思ったのは秦啓源であった。だが秦啓源は、謂わば上海の市中に潜居してるもののようで、その消息がよく分らなかった。

星野は中日文化協会の人に頼んだ。

協会の人は頭をかしげた。

「秦啓源氏のことは、よく分りませんが、早速取調べて、何とか連絡をつけましょう。」

それが、幾日待っても、音沙汰なかった。

星野は大陸新報の人にも頼んだ。

新報の人はちょっと考えた。

「秦啓源……名前は知っていますが、よく分りませんね。聞き合せてみましょう。」

それが、やはり、いつまでも音沙汰なかった。

それから、星野は、日本軍特務機関の嘱託になってる某氏にも、頼んでみた。

某氏は事もなげに引受けてくれた。

「秦啓源ですか、よく知っていますよ。すぐに逢うようにしてあげましょう。」

然し、それきり音沙汰がなかった。

星野はなお二三の中国人に尋ねてみたが、要領を得なかった。

つまり秦啓源は、日本側にも、また中国側にも、一部の人々にはよく知られているが、大部分には知られていなかった。その上彼は、何か故意に姿を晦ましているらしくもあった。星野は少し忌々しく思った。