轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あきや

空家

宮崎 湖処子

「国民之友」1889(明治24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,554 字 · 30 页

青空文庫

もなかりしぞとよ、

早や酒温まり肉煮えたり、さりながら一行はまだ盃を挙げざりき、人々は皆気を焦ちて越し方を見回れり、はるかの塘に勇蔵夫婦の影ようやく顕われぬ、彼らは暫時柳の蔭に坐し顔を見合わせ言葉なし、泣きはらしたる阿園が両眼ムラムラと紅線走り手巾持てる手も今は早や拭く力なければ涙は滴々湛えて落ちぬ、磧よりは手を拍ち声を揚げ手巾を振りて此方を呼びたり、

もはや語る間もなきかと思えば、阿園は言うべき語を知らず手拭を顔にあて俯向いてただよよと泣くのみ、勇蔵もうち萎れて悄然として面を伏したり、身を投げてよりすがる阿園が頬より落つる熱き涙は、ハラハラと夫の小手に当って甚深無量の名残りを語れり、

昨日まで石のごとく堅固なりし勇蔵が一念、今はいかばかり脆くなりしよ、彼はさきの決心のただ一時の出来ごころなりしを悟り、膝を交えて離別を語るのいたずらなりしを思い当りて悔ゆれども、事すでに晩れたれば、今はただ心強く別るるほかはなけれど、彼は痛くも力なくなり、あたかも生きながら別るるもののごとくうち沈み、「われにもしものことあらば、何事も佐太郎と相談して、心のままに再縁すべし、必ず短気に誤るまじきぞ」