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りゅうたんだん

竜潭譚

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,899 字 · 30 页

青空文庫

「あ。」とばかりにいらえて姉上はまろび入りて、ひしと取着きたまいぬ。ものはいわでさめざめとぞ泣きたまえる、おん情手にこもりて抱かれたるわが胸絞らるるようなりき。

姉上の膝に臥したるあいだに、医師来りてわが脈をうかがいなどしつ。叔父は医師とともに彼方に去りぬ。

「ちさや、どうぞ気をたしかにもっておくれ。もう姉様はどうしようね。お前、私だよ。姉さんだよ。ね、わかるだろう、私だよ。」

といきつくづくじっとわが顔をみまもりたまう、涙痕したたるばかりなり。

その心の安んずるよう、強いて顔つくりてニッコと笑うて見せぬ。

「おお、薄気味が悪いねえ。」

と傍にありたる奈四郎の妻なる人呟きて身ぶるいしき。

やがてまた人々われを取巻きてありしことども責むるがごとくに問いぬ。くわしく語りて疑を解かむとおもうに、おさなき口の順序正しく語るを得むや、根問い、葉問いするに一々説明かさむに、しかもわれあまりに疲れたり。うつつ心に何をかいいたる。

ようやくいましめはゆるされたれど、なお心の狂いたるものとしてわれをあしらいぬ。いうこと信ぜられず、すること皆人の疑を増すをいかにせむ。ひしと取籠めて庭にも出さで日を過しぬ。