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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

そもじを十字架に付ければとて、罪は贖えぬほどに底深いのじゃ。横蔵を害め、慈悲太郎を殺したそもじの罪は、いまここで、妾が贖ってとらせるぞ。よもや、慈悲太郎が聴いた、足音の明証を忘れはすまいな。だれか、早う、この者の靴を脱がすのじゃ」

凛とした声に、躍りかかった四、五人の者が、長靴を外すと、そのとたん、フローラは激しい動悸を感じた。

見ると、グレプニツキーの右足は、凍傷のため、膝から下を切断されていて、当て木の先には、大きく布片が結び付けてある。

しかし、事態を悟ったグレプニツキーは、意外にも、安堵したような爆笑を立てた。

「これは奥方様、お戯れにも、ほどがあるというもの。なるほど、靴を脱いでしまえば、片足には音がないのですから、さような御推測も、無理とは思いませぬが、しかし、黄金郷の探検を、共にと誓った御両所を、なんで害めましょうぞ。神も御照覧あれ、手厚いおもてなしに感謝すればとて、敵対の意志など、毫も私にはござりませぬのじゃ」

と、はだけたシャツの下から、取り出した十字架に接吻するのだった。

しかし、紅琴は、凝視を休めず言い続けた。

「ええ、そのような世迷いごとに、聴く耳は持たぬわ。