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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

この島の法は、とりも直さず妾自身なのじゃ。とくと真実を打ち明けて、来世を願うのが、為であろうぞ」

すると、グレプニツキーは、相手の顔をじっとみつめていたが、見る見る絶望の表情ものすごく、胸をかきむしって、咆え哮けるような声を出した。

「馬鹿な、短慮にはやって、せっかく手に入ろうとする、黄金郷を失おうとする大痴者めが。したが奥方、とくと胸に手を置いて、もう一度勘考したほうが、お為でありましょうぞ」

「ホホホホホ、なんと黄金郷とお言いやるのか……」

女丈夫は、蒼白い頬をキュッと引きしめて、嗤い返した。

「その所在なら、そもじは、不要じゃと言いたいがのう。妾はそうと知ればこそ、このラショワ島に砦を築いたのじゃ」

と、何やら合図めいた眼配せをしたかと思うと、もがいて投げつけられたグレプニツキーの上で、幾つとない銀色の光が入り交じった。

彼は、しばらく手足をばたばたとさせ、狂わしげにもだえていたが、やがて瞼が重たく垂れ呻きの声が途絶えると、そのまま硬く動かなくなってしまった。

紅琴は、しばらく眼を伏せて、グレプニツキーの死体を、気抜けしたように見つめていた。白っぽい、どんよりとした光の中で、海鳥が狂おしげに鳴き叫んでいたが、やがて、血が塩水にまじって沖に引き去られてしまうと、浜辺はふたたび旧の静寂にもどった。