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かみのゆくえ
紙の行方
中谷 宇吉郎
「図書」1952(昭和27)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,264 字 · 3 页
この行方は、多分燃やされるのであろう。
ところで残りの紙であるが、その処分はきわめて簡単明瞭である。裏庭で燃してしまうのである。どこのうちにも、粗い金網で造った大きい籠があって、その中へ余分の紙はどんどん放り込んでおく。三、四日して大分たまると、夕方裏庭でそれに火をつける。凄い勢いで燃えるが、金網の籠であるから、炭坑で使う安全灯の原理によって、全然危険なく、紙だけ焔を天に向けて、勢いよく燃えてしまう。
この頃の女房の役目の一つは、毎夕方、この紙を燃すことと、落葉を焚くこととである。今の家は、シカゴ郊外の住宅地で、立木が多く、少し大袈裟にいうと、森の中に住んでいるようなところである。毎日、庭一杯に落葉がたまるので、それを焚くのが、主人の役目であるが、うちでは日本の道徳を守って、女房に焚かすことにしている。
たそがれがまだ長いので、夕焼けの光が、いつまでもつづいている。芝生の緑は、このたそがれの光の中で、エメラルドがかった光彩を放っている。立木は三階建の家の屋根をおおって、黄葉の天蓋をつくっているという、まあ少し気取っていえば、そういう周囲の景色である。