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びじんたかじょう

美人鷹匠

大倉 燁子

「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页

青空文庫

松波博士は胸を轟かせながら遺書を開封した。

「同封の書面をお読み下すったならば、私の申上げることの偽りでないことがお分りになりましょう」

と、いう文字を冒頭にして、小間使花からの手紙が二通巻き込んであった。博士はまずそれを読んで、愕然とした。

小夜子の遺書にはその手紙を読んで以来の苦悶を細々と認めてあった。そして最後にこんなことが書き加えてあった。

「私は密かに、一人で何もかも調査しました。最初半信半疑であったことも残念ながら事実であり、私が箱根の別荘に行っていた間に、後々問題を起さぬという約束で十二分の手当を与えて花との手をきられた事も、すべて仲働きのきよから聞きました。申すまでもなく達也は花の児で、花の家に恐しい汚れた血の伝わっている事実もたしかめました。私はこの由緒正しい松波家の血統に汚点を残すに忍びません、御先祖様に対して申訳ないと考えました。そういう体質を受けついで生れた達也自身も決して幸福な生涯を送ることは出来ません、家を思い、達也の将来を思い、私は心を鬼にしてこの忌わしい汚れを取り除く覚悟を致しました。花からこうした脅迫を受けていることが万一世間に知れたらば、あなたの御名誉はどうなるのでしょう、達也さえいなければ脅迫の材料がなくなります。