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びじんたかじょう

美人鷹匠

大倉 燁子

「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页

青空文庫

鷹の爪

達也は興奮して母の手を握り、足をバタバタやって見ていた。その時、ふとした表情に小夜子は花の俤をはっきりと見た、彼女はハッと胸を打たれて、握っている達也の手を思わず振り放した、顔ばかりではない、夢中になって跳ねている姿が、やっぱり花そっくりだ、彼の全身到る所に花の面影がある。

小夜子は軽い眩暈を感じた。もしや、夫がその面影を人知れず懐しんでいるとしたら――と、思うと、彼女は堪らなかった。

見物は面白そうに、他愛なく喜んでいる、その中に、小夜子一人は深い物思いに打ち沈んでいるのだった。

「達ちゃん、もう帰りましょうよ」

「お母様、僕、まだ帰るのいやだよ」

達也はなかなかその場を離れようとしなかった。

鷹の爪

その日を始めとして、美人鷹匠はその仇めいた姿を毎日空地に現わした。夕方引揚げる時には鳥籠は空っぽで、雀も鳩も売切れという繁昌ぶりだった。

達也の鷹狩熱はなかなかさめなかった。毎日雀を一羽、二羽、と捕って帰った、捕った雀は新らしく買った大きな鳥籠に入れて飼っておいたが、どういうものか、次ぎ次ぎと死んで行った。

鷹匠が現われてから恰度七日目だった。

小夜子は外出から戻って内玄関へ上ろうとすると、俄かに門前が騒々しくなって、小砂利の上を馳ける大勢の跫音が、ただならぬ出来事を語った。