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びじんたかじょう
美人鷹匠
大倉 燁子
「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页
少時すると乳母やさんは達也様を小さい寝台の上にねかしつけ、ツト、起って廊下へ出ました、たぶんご不浄へでも行ったのでしょう。
その隙に、素早く、花は抱いていた松吉と達也様をすりかえてしまったのでございます。幸か不幸かその当時の二人は瓜二つでした。
そこへ戻ってきた乳母やさんは愕いて身動きも出来ず、棒立ちになってしまいました。父はいきなり短刀を突きつけ『声を出すと命はないぞ!』と脅しました。しかし、乳母やさんは存外落ち付いたしっかり者でした。もうこうなっては仕方がありません、泣いても、騒いでも、若様のお姿はそこにはない、おくるみに包まれて眠っているのは汚ない産衣を着た松吉で、達也様は花の手にしっかりと抱かれ、泣きもせず、もう先へ逃げてしまっていたのですから――。
声を出して殺されるか、主人に不注意を叱られるか、どちらかです、ところが乳母やさんは何も云わず、松吉の衣類を脱がせて父へ渡し、お戸棚から新らしい白絹の産衣を出して着せたのです。そしてまんまと松吉は達也様になりすましたわけなのでございます。
その日から幸福な松吉は男爵家の若君様として、大切に育てられました。