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おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页
日本人で最初の解剖学担任の大学教授故田口和美博士(小金井博士より数年の先輩で一時講座を分けて担任した)並びにこれを助けた今田束氏等の人骨採集、標本製作の苦心はなみなみならぬものであったらしい。今田助教授は田口教授よりも早くなくなられた人で、幕末知名の江川太郎左衛門の縁故者とか、非常に精巧な技術を持っておられ、その側頭(顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6))骨に自ら刀を加えて骨性迷路を浮彫りのように現わした標本など私どもも学生時代に見せられたのであった。
キンストレーキについては、金沢の古い解剖学者故金子治郎博士の談話にも、金沢医学館(金沢大学医学部の前身)に、前田藩が仏国製のキンストレーキを大金で購入したのがあって、医学館の誇りになっていたとあるから、今でも彼地に保存されているかも知れぬ。なお金子博士は人骨採集のため各所の墓場を掘り歩いたことを語られ、自分達の場合は金沢犀川河畔柳原村はずれ、今の犀川鉄橋より上流二町ほどの所にある胴切場といわれた刑死体取捨場に夜半忍んで行って、中にはまだ肉つきの死体があるのを、脇差で首や手足を切り取ったものであるといわれ、またこの仕事を脅威したものは邏卒(警官)でなく、獰猛な野犬群であったと述懐された。