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おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页
なおキンストレーキにつき、またそれと関連する明治初期の医学教育革新期における先人の学修材料苦心談としては、私の父の先輩陸軍軍医の長老石黒忠悳子爵の懐旧談を欠くことはできない。
石黒さんは九十の寿を迎えられた方で私もお訪ねしてお話を承ったのであるが、その明治医学発達史を述べられた「况翁八十八年」の中に、その若い時代に解剖を学ばれたときの経験が出ている。当時解剖学を学ぶには漢文の解体新書のほかにフレス、ボックス等の著、ウェーベルの解剖図があった。この解剖図は幅二尺五寸ばかりの掛軸七本から成り、和蘭銅版で骨、筋、血管、神経、内臓等が示してあった。その他にキンストレーキ人巧体とよばれた張子細工の紙製人体模型を参照したが、それは江戸医学所に一つ、長崎精得館に一つあったぎりで、実際の解剖は犬や猫で間に合わせていた。人骨といっては松本順先生寄贈の頭蓋骨一個あるのみであったので、塾中五名の同志と談合して小塚原刑場に人骨掘り出しに行くことを計画した。まず刑場の傍にあった回向院分院の住職に面会し、そこには解剖されて我々のためになってくれた人が埋められてあるから回向料を納めたいと申し入れ金一両二分を包んで出した。