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みみとめ
耳と目
寺田 寅彦
「映画評論」1933(昭和8)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,065 字 · 9 页
耳も目も、いずれも二つずつ、われわれの頭の頂上からほぼ同じ距離だけ下がった所に開いている。目のほうは前面に二つ並んでほぼ同じ方向を向いているのに耳のほうは両側にあって、だいたいにおいて反対の方向に向いている。もっとも耳たぶがあるために各方の耳が精確にどちらに向いているかという事はそう簡単に言われないが、しかし、この平凡な事実は考えてみるといろいろなおもしろい意義をもっている。
二つずつあるのは空間知覚のためであって、二つの間の距離が空間を測量するための基線になるのである。耳と目とが同じ高さにあるのは視覚空間と聴覚空間との連絡、同格化のために便利であろうと思われる。ところが光線伝播は直線的であるので二つの目が同時に対象に向かっていなければならない。従って、二つが前面に並んでいないと不都合である。これに反して音の場合には音波が頭で回折されるから、一つの耳の反対の側から来る音でもその耳に到達する。しかし正面から来る音よりは弱く聞こえるのである。それで音源の方向を知るにはむしろ両耳が頭の反対の側にあるほうが好都合なわけになるのである。
この事は、トーキーの場合にはそれほど問題にならないようにも思われる。