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しぜんげんしょうのよほう

自然現象の予報

寺田 寅彦

「現代之科学 第四巻第三号」1916(大正5)年3月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,394 字 · 21 页

青空文庫

六

六

以上述べたる所に基づき、また現在科学の進歩程度に鑑みて天気予報と地震予報とを対照すれば、その間の多大の差異あるを認めざるを得ず。

現在の気象観測制度をもってすれば各気象区域における大体の天気の推移を予知する事は十分可能にして、観測の範囲の拡張につれて的中の公算を増すべしと考えらる。しかれども毎平方里における雨量の異同を予言するがごときは望み難かるべし。

地震の場合においては、いまだ気象要素に相当すべき条件さえ明白ならず。従って解析的の方法を取るべき材料いまだ具備せず。これらが一通り具備したる暁においても、現象の偶然性を除く程度まで精しくこれを知悉する困難は現象の性質上甚だ大なるべし。かくのごとき場合には公算論の指示する統計的方法を取る外なかるべきも、公算が変数の連続函数なりと断定し難く、また最大公算を有する場合が唯一ならざる場合には特別に慎重なる考慮を要すべし。

地震予報をして天気予報のごとき程度まで有効ならしむるには如何なる方向に研究を進むべきかは重要なる問題なり。物理学上の問題としては、地殻岩石の弾性に関する各種の実験のごときは極めて肝要なるべし。