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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「あるんだけど、今ルンペンなのよ。それが会社へしれるとまたうるさいし……それにね、はる子さんおなかがあやしくなってたのよ」

洗面所にいた女事務員たちみんなが、れい子のこの話へ注意をひきつけられた。

「そうだったの!」

「まあ……しらなかったわ」

「でもね、旦那さんがそんなだし、会社じゃたださえ結婚してる女をよろこばないでしょ? 帰りをいそいだり、欠勤が多いって云ったり。――はる子さんが今身持んなって、それでクビんでもなったらとても暮しちゃいけないことになるもんだから、あのひと、煩悶してたわ。そりゃ……」

れい子は言葉を途切らしたがちょっと声をひくめて、

「……このごろ、いろんなことがあるようでもまだナカナカなのね。内緒だけれど、はる子さん、しくじったのよ。それでずっと工合がわるかったんですよ」

サワ子が、明るい圧えつけられたような空気の中でそっと溜息をついた。柳が沈黙をやぶった。

「医者にかかったんでしょう? でも」

「二十五円もとられたんですって……出血がとまらなかったのよ」

ミサ子は堪らない心持になって云った。

「実際ひどいもんだわ。働かすときには結婚していることなんか無視して働かしといて、いざ倒れたとなるとみんなおっかぶせちまうんだから」