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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

れい子が、不安そうに片頬笑いをうかべて、

「私なんか、あやういもんだワ」

と云ったが、誰もそれを笑えなかった。

「だってあなたんところ勤めてるんでしょ」

「そりゃそうだけれど、いつどんなことになるかしれないじゃないの。……人間の体だもの」

「ねエ、バカにしてるわねえ」

サワ子が熱心に云った。

「何ぞって云うと女らしくしろ! 女らしくしろって会社じゃ云うくせしてねえ!」

この頃の不景気につれて、会社ばかりでなくいろんな工場でも、男より賃銀のやすい女をドシドシ使うようになって来た。しかも家持ちの、年数の古い女は、能率があがらないと云ってクビにする。その代りに小学を出たばっかりぐらいの若い娘を、モットやすい賃銀で雇って仕込む。

「私んとこの下の小母さんの親類でも、そういうわけで二人もクビんなったわ、ついこの頃」

柳の話をみんな黙ってきいていたが、れい子がしんみりと云った。

「――大きなビルディングの中にいるというだけで、私たちだって女工さんだって違いありゃしないのねえ。知識労働だなんていい気になってるだけ滑稽みたいなもんだわ」

ミサ子は××○○会社の女事務員たちの心持が一部ではあるがこんなに揃ってズーッと引緊ったのははじめてだと思った。