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しば、あざぶ
芝、麻布
小山内 薫
「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月25日~30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页
尤も、教務からは何の講義をしろという命令もなかったのである。時間表には、いつもただ「英文学」と書いてあった。
慶応義塾へは、それからずうっと――その間に、向うから休ませられたり、こっちから休んだりしたことはあったが――兎に角、大震火災の年まで通い続けた。
慶応義塾の生活では、なんといっても、ヴィッカアス時代が、一番なつかしい。ヴィッカアス時代というのは、今の大ホオルの後にあるヴィッカアスと称えられる小さな独立会館が、文科の教室になっていた時代のことである。
多分昔いたヴィッカアスという外人教授の舎宅か何かであったのだろう。二階建の旧式な洋館で階上階下とも部屋は四つ位しかなかった。二階は三つの部屋が教室にあてられて、他の一つが物置きになっていた――私はこの部屋に、三田文学の返品がむごたらしく荒縄に縛られて、山のように積まれていたのを覚えている。それから、のん気な学生が袴をここに投り込んで置いて、学校まで着流しで来ては、よくここでこそ/\袴をはいているのを見た。
階下は部屋の一つが職員の食堂にあてられ、他の一つが学生の小さな集会場になっていた。他の部屋はコック部屋にでもなっていたのだろうか、記憶が甚だぼんやりしている。