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しば、あざぶ

芝、麻布

小山内 薫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月25日~30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页

青空文庫

或日或人が高輪車町の海岸に適当な家があると知らせてくれた。私は早速出かけて行って見た。

電車の停留場からほんの五、六間も行ったところの左側で、往来からずっと奥へはいったところに大きな門がある。門をはいると、門番の住居が別に一棟立っているのに先ず驚かされた。

大名屋敷の表のような堂々たる玄関、宿屋の風呂場のような広々とした明るい湯殿、板の間が十畳以上もあろうという台所。土蔵が二戸前あった。裏には、テニスコートぐらい出来そうな空き地がある。座敷は二十何畳という広さのが、階上にも階下にも二つずつくらいはあった。庭には池があり、築山があった。その向うが海になっている。便所は勿論、湯殿までが上下二つあって、それで家賃が七十円だというのである――尤も、物価のまだ安い時分ではあったが。

姉の家の子供が五人、私の家の子供が二人、子供だけでも七人という数だから、兎にも角にも安くて広いというのを取柄に、早速そこへ二軒の家を一つにして越した。

ところが、少し離れているとはいうものの、門の前を市電が通る庭と海との間には、レエルが幾筋ともなく走っていて、汽車が通る。貨物列車が通る。