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はなをうめる

花をうめる

新美 南吉

「哈爾賓日日新聞」1939(昭和14)年10月15日~10月31日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,555 字 · 7 页

青空文庫

また前の晩にうめておいた花のことをつぎの朝、子ども心の気まぐれにわすれてしまうこともあった。そういう花が私たちにわすられたままたくさん土にくちてまじったことだろう。

私たちは家に帰る前に、また、そのとき使った花や葉を全部あつめほんとうに土の中に土をもってうめ、上を足でふんでおくこともあった。遊びのはてにするこの精算は私の心に美しいもの純潔なものをもたらした。子どもでありながらなんといじらしいことをしたものだろう。

ある日の日暮どき私たちはこの遊びをしていた。私に豆腐屋の林太郎に織布工場のツル――の三人だった。私たちは三人同い年だった。秋葉さんの常夜燈の下でしていた。

ツルは女だからさすがに花をうまくあしらい美しいパノラマをつくる、また彼女はそれをつくり私たちにみせるのがすきだった。ではじめのうち林太郎と私のふたりがおにでツルのかくした花をさがしてばかりいた。

私はツルのつくった花の世界のすばらしさにおどろかされた。彼女は花びらを一つずつ用い草の葉や、草の実をたくみに点景した。ときには帯のあいだにはさんでいる小さい巾着から、砂粒ほどの南京玉を出しそれを花びらのあいだに配した。