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はなをうめる

花をうめる

新美 南吉

「哈爾賓日日新聞」1939(昭和14)年10月15日~10月31日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,555 字 · 7 页

青空文庫

そしてひとりでツルのかくした花をさがした。息をはずませながら。まるで金でもさがすように。だがついにみつからなかった。

それから以後たびたび思い出してはそこへいってさがした。花はもうしおれはてているだろうということはすこしも考えなかった。いつでも眼を閉じさえすれば、ツルのかくした花や南京玉が、水のしたたる美しさでうす明かりの中にうかぶのであった。たれか他の者にみつけ出されると困るので、私はひとりのときにかぎってそこへさがしにいった。

遊び相手がなくてひとりさびしくいるとき、常夜燈の下にツルのかくしたその花があるという思いは私を元気づけた。そこへかけつけ、さがしまわるあいだの希望は何にもかえがたかった。いくらさがしてもみつからない焦燥もさることながら。

ところがある日、私は林太郎にみられてしまった。私が例のように常夜燈の下をすみからすみまでさがしまわっていると、いつのまにきたのか林太郎が常夜燈の石段にもたれてとうもろこしをたべていた。私は林太郎にみられたと気づいた瞬間ぬすみの現行をおさえられたようにびくっとした。私はとっさのあいだにごまかそうとした。