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はなたばのむし
花束の虫
大阪 圭吉
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,893 字 · 36 页
いつもならばもう仕事を終って帰っている秋田も、流石に今日は居残っていた。そして、不意に若い女などを連れて帰って来た大月を見ると、もう口も利けない位いに驚いて了った。
が、そんな事には一向に無頓着らしく、帰って来た大月は、秋田に一寸微笑して見せただけで、直ぐ隣室へその女を連れ込むと、間の扉をピッタリ閉めて了った……。
そして、おお、呆然として了った秋田の耳へ、軈て、狂躁なジャズの音が、軽いステップの音と一緒に、隣室から聞え始めて来た。
全く、「先生」のこんな態度に出会ったのは、今日が初めてであった。秋田はもう書類の整理どころではなくなった。ともすると、鼻の先がびッしょり汗ばんで、眩暈がしそうになるのを、ジッと耐えて、事務卓に獅噛みついていた。が、それでも段々落着くに従って、彼の脳裡に或るひとつの考えが、水の様に流れ始めた……
――ひょっとすると、この女が、あの梟山の海水靴の女ではないだろうか? そして、先生が……だが、そうすると、一体この騒ぎは何になる……いや、これには、何か深い先生のたくらみがあるに違いない。そうだ。兎に角この女を逃してはならない。