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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

それにもかかわらず一輪はついに一輪で、一輪と一輪の間から、薄青い空が判然と望まれる。花の色は無論純白ではない。いたずらに白いのは寒過ぎる。専らに白いのは、ことさらに人の眼を奪う巧みが見える。木蓮の色はそれではない。極度の白きをわざと避けて、あたたかみのある淡黄に、奥床しくも自らを卑下している。余は石甃の上に立って、このおとなしい花が累々とどこまでも空裏に蔓る様を見上げて、しばらく茫然としていた。眼に落つるのは花ばかりである。葉は一枚もない。

木蓮の花ばかりなる空を瞻る

と云う句を得た。どこやらで、鳩がやさしく鳴き合うている。

庫裏に入る。庫裏は明け放してある。盗人はおらぬ国と見える。狗はもとより吠えぬ。

「御免」

と訪問れる。森として返事がない。

「頼む」

と案内を乞う。鳩の声がくううくううと聞える。

「頼みまああす」と大きな声を出す。

「おおおおおおお」と遥かの向で答えたものがある。人の家を訪うて、こんな返事を聞かされた事は決してない。やがて足音が廊下へ響くと、紙燭の影が、衝立の向側にさした。小坊主がひょこりとあらわれる。了念であった。

「和尚さんはおいでかい」