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あらほうし

荒法師

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页

青空文庫

けれどもむろんまだ泰平というには遠い、年々どこかに兵火が揚るし、現に関東には北条氏の強大な勢力が根を張っていて、いま豊臣氏に敢然と一戦を挑み、小田原城を中心にあわただしい風雲が巻き起っている。こういう世相を仏徒はなんとみるか、――修羅妄執の巷、とよそにみくだすだけである、戦火に逐われる民たちにも一椀の施粥をすれば能事足れりとしている、衆生済度というのは口舌の理想で、じっさいにはまったく衆生と交渉がない、こういう事実だけをとりあげて当否を論ずるのは誤っているし、それではそこからどう実践に踏みこむべきかを考えると、俊恵にもまるで方途がつかないのだ。かれは仏法そのものにさえ疑いをもった、宗教は理論によってあらわれはしない、発生はきわめて素朴で簡明だ、かれは発生までかえるところに打開の道を求めた、その第一が「釈迦は天竺びとである」というわかりきった点である、天竺びとを「本尊」とすることに些かの疑いをもたない仏法のありかた、それがともかくもひと筋の光りとなってかれの頭にひらめいてきたのだ、したがって本尊放逐はかれの目的ではなく、そこから改めて出なおす