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そうし

荘子

岡本 かの子

「三田文学」1935(昭和10)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,362 字 · 25 页

青空文庫

快晴の日の外気を吸って皮膚は生々した艶を浮べて健康そうに上気した顔は荘子の洛邑に住居した時代の美貌をいくらか取り返したように見えた。

「ひるの刻げんになりました。酒など温め、上座へお席をあらためておもてなしを致しましょう」

と云い乍ら厨へ去った田氏に代って荘子は空いた牀几に腰を下した。

荘子は先ず先頃洛邑での遜のあついもてなしを謝したのち、次には黙って掌を示し、仰向けた指の付根に幾粒も並ぶマメを撫でて遜に見せた。遜は落付いた声音で云った。

「あなたは薪を割って愉快な日頃をお過しですが洛邑では不興が起りました」

「え、それは何ですか遜さん」

「麗姫がな、あれからすっかり変りました」

「なに麗姫が? 麗姫が何とかしましたか」

「あなたが麗姫を尋ねて洛邑を退出なさった頃から麗姫が変り始めましたな。今までの我儘を恥じる恥じるとそればかり申してな。髪形は気にする言葉使いは気にする。人の評判は気にするからもう以前の麗姫では無くなりました。どうしたことでしょう。それで却って洛邑の人気を落して仕舞ったわけです。あの娘はあの勝手気儘なところで人を引きつけて居たのですからな。で私は云ってやりました。