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そうし

荘子

岡本 かの子

「三田文学」1935(昭和10)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,362 字 · 25 页

青空文庫

荘先生がそなたの我儘を見に来たと云われたのは却ってそなたののびのびして生きて居られる様子を快哉に感じられ「道」を極める荘先生に好い影響さえお与え申したのだ。見当違いに恥じたりなさるな。と呉々も申し聞かせたのですが駄目です」

荘子は腕を措き眼を瞑って深く考え沈んで居たがやがて沈痛な声の調子で云った。

「然し、それもまた天恵に依る物化の一道程かも知れないから、致し方もあるまい。丁度わしが書物や筆を捨てて薪割りの斧を取上げたようにな」

遜はまじまじと荘子の顔を見て居たがややせき込んだ調子で云った。

「私には何もかもまだはっきりと分りませんが、斯ういうことも麗姫に云って聞かせてやったのです。南海にという名前の帝があった。北海に忽という名前の帝があった。二人は中央の帝の渾沌を訪問した。渾沌は二人を歓迎し大へん優遇した。そこで客の二人は何とかして礼をしようと思い相談したことには、=人にはみな七竅がある。それで視聴食息する。ところが渾沌はそれが無い。われわれの好意で丸坊主の渾沌に七竅を穿ってやろうでは無いか。そこで二人は渾沌に日に一竅ずつを鑿った。そしたら七日目に渾沌は死んでしまった。