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かふうせんせいとじょうじんのしゃしん
荷風先生と情人の写真
佐藤 春夫
「週刊現代 第一巻第六号」1959(昭和34)年5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,934 字 · 6 页
先生の青春時代
毎晩そこに先生の通っていた「村の小屋」とか「村の茶屋」とかいったカフェーに陣取って、夕方から看板まで先生を中心におしゃべりをしたものである。ほとんど毎晩顔を見せる先生に敬意を表して店ではいやな顔もしないおかげで、我々も心おきなく談笑したものであった。荷風先生は話好きで話題はあとへあとへつづいた。先生の死に臨んで自然と思い出されたその当時の幾つかの話をここに披露して先生を偲んでみたい。
先生の青春時代
先生は、僕にはもと学生であったせいか決してそんな話はなく文学論や世相などを語られたが神代君にはかなり無遠慮な猥談などもしたらしい。僕はそれを神代から伝え聞いたものであった。神代の話によると、先生は一夕青春時代を回想して世界をまたにかけた色道修業をいささか誇らかに笑い話されたことがあったので、神代は、
「それでは、先生百年の後に紅毛碧眼の血の交ったような第二世が出現するような心配はございますまいか」
「いや大丈夫、そんな心配はありません。いつも世界に鳴りひびいた日本武術の秘術を尽して国威をかがやかしては来たが、戦場には必ず武装して、武装なしの白兵戦をするだけの勇気がなかったから、国の内外を問わず、万一、天一坊が出現しても、疑いもなくみなニセ者と思いなさい」