轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页
それは病と辛労のために変貌しているが紛れもなく半三郎の印象と合うものだ。現に今、眼の前に彼を見てそのあまりに紛れのないことが烈しく菊千代を打った。
「――どうして此処へ来た。半三郎、父上のお云いつけか」
「――私の一存でございます」
「――なんのために」
半三郎はまた頭を垂れ、両手をついていた。菊千代は喉もとへなにかこみあげてくる、もどかしいようなせつないような、まだ経験したことのない感情で胸がいっぱいになった。
「――半三郎は昔はなにも云わなかった、自分の云いたいことも、云わなければならないことも、口には出さないで、黙っていた……けれども今宵はいわなければいけない、本当のことを、残らず話さなければいけない」
菊千代はちょっと言葉を切り、昂ぶってくる気持を抑えるように深く息をついた。
「――どうして、此処へ来た、半三郎、あのときのことをひと太刀うらむためにか」
半三郎はやはり顔を伏せ、手をついたままで否という動作をみせた。泣いていたのか、泣くのを堪えていたものか、低いしゃがれた声で、とぎれとぎれに答えた。
「――私をお刺しあそばしたときの、若君のお心の内は、私にはよくわかっておりました、お恨み申す……いいえ、半三郎はあのとき、よろこんでお手にかかりました、お恨み申すどころではございません、よろこんで……それが当然の