轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页
ことでございましたから」
「――それは、知っていたからという意味か」
「初めから、御殿にあがりますときから、存じておりました」半三郎はいっそう声を低めた、「――お相手にあがりますまえ、父が秘事である由をひそかに告げ、お側へあがったらよくよく注意して、若君のお心を紊さぬよう、秘事のためにお心を傷めることのないようにと繰り返しきびしく申しつかりました、御殿にあがったのは七歳のときでございます、お側に仕えて年々と御成長あそばすお姿を拝見しながら、私はおそれながら……」
「云って呉れ、遠慮はいらない、構わずなにもかもすっかり話して呉れ」
「申してはならぬことでございますが」
「いや聞きたい、なにもかも残らず聞きたいのだ」
半三郎はためらいがちな口調で、注意ぶかく言葉を選びながら云った。……しだいに女らしく、美しくそだってゆく菊千代を見て、彼は少年らしい義憤を感じはじめた。それまでは秘密を知っているのは自分だけだという自覚から、つよい保護的感情で仕えていたのであるが、それが義憤に変り、やがて愛情がうまれた。
「まことに無法なしだいではございますが」
半三郎はごく控えめな表現で、菊千代に対する同情と愛憐の気持を語った。