轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくづきよ
菊月夜
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1944(昭和19)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,129 字 · 32 页
もう二年ばかり延期を願うつもりでいたところを、急に国許から呼び戻されて帰ったのだった。それゆえ彼は、予備報告をしたらそれを機会に、また研究継続を願い出る考えだったのである。……奉行役所支配は安倍孫太夫だった。提出した調書は受け取ったが、継続の願いは「いずれお上へ伺ったうえで」というだけで、あまり期待のできそうもないようすだった。
「本調書はできしだい呈上いたしますが、完全なものとは申上げ兼ねますので、ぜひもうしばらく継続させていただけますよう、あらかじめお願い申しておきます」信三郎は、諄いと思いながらそう念を押して役所を出た。すると二の丸の桝形のところで、父の藤左衛門と会った。父も役所から退出したのだそうでいっしょに下城したが、大手の辻まで来るとふと思いついたように、
「……ちょうどよい、おひきあわせしておくから同道しろ」そう云って道を少し戻り、疋田兵庫助の屋敷へはいっていった。うむを云うひまはなかった。――いったいどういうお考えなのだろう、信三郎には父の気持がわからなかった。なんのための訪問かも解しかねて、客間へとおされてからも心がおちつかず、ひどく手持ちぶさたに坐っていた。