轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きくづきよ

菊月夜

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1944(昭和19)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,129 字 · 32 页

青空文庫

自分のゆくえは捜さないようにと、結びの言葉までは読むことができず、絢子は面を掩って噎びあげた。理をつくし情もつくした文章だった。悲しげな文字はどこにもない、凛とした心の美しく澄みきったさまがよく表れているけれども、それが却って二人の胸を刺した。その澄みきった筆つきの裏に、どれほどの苦しさ悲しさが秘めてあることだろう、さりげなく走らせた文字の一つ一つは、おそらく涙で濡れているに違いない、……信三郎はふと面をあげた、すでに黄昏の深くなった廊下を、しずかに近づいて来る足音が聞えたのだ。見ると若いはしたの一人が白菊の花束を捧げてしずかにそこへ膝をついた。

「申上げます、ただいまどこやらの使いの者が、この花束をお届け申しにまいりました」

「どこからの贈り物だ」信三郎がそういうよりさきに、絢子が立っていって花束を受取った、――使の者は贈り主の名を知らず、ただことづかってきたと云ってたち去ったという。はしたをさがらせて、信三郎と絢子はその花束を見まもった、……雪のように清浄な白菊である、むせるほど香の高い大輪の花の中から、一枚の短冊が出てきた。

心おきなくゆく道や菊月夜智信