轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
殊に彼女の幼馴染だったおようの娘の初枝の小さい頃の話は何度も繰返して話させた。初枝は十二の冬、村の小学校への行きがけに、凍みついた雪の上に誰かに突き転がされて、それがもとで今の脊髄炎を患ったのだった。その場に居合わせた多くの村の子達にも誰がそんな悪戯をしたのか遂に分からなかった。……
明はそう云う初枝の幼時の話などを聞きながら、ふとあの勝気そうなおようが何処かの物陰に一人で淋しそうにしている顔つきを心に描いたりした。今でこそおようは自分の事はすっかり詮め切って、娘のためにすべてを犠牲にして生きているようだけれど、数年前明がまだ少年で此の村へ夏休みを送りに来ていた時分、そのおようがその年の春から彼女の家に勉強に来て冬になってもまだ帰ろうとしなかった或法科の学生と或噂が立ち、それが別荘の人達の話題にまで上った事のあるのを明はふと思い出したりして、そう云う迷いの一ときもおようにはあったと云う事が一層彼のうちのおようの絵姿を完全にさせるように思えたりした。……
早苗は、彼女の傍で明が空けたような眼つきをしてそんな事なんぞを考え出している間、手近い草を手ぐりよせては、自分の足首を撫でたりしていた。