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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

「小説新潮」1959(昭和34)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页

青空文庫

――どうして二人はいっしょにならねえんだろう。

繁次はそれが訝しかった。参吉にも祖父とその女がいるし、おひさには寝たっきりの父親がある。たぶんそれが障りになっているのだろう、と思ったけれども、参吉は男であり、祖父は丈夫で女もいる。その気になればおひさと夫婦になって、病人ひとりくらい養ってゆけるではないか、などと思ったりした。

夏になってから、――浅草寺の四万六千日のすぐあとのことだが、繁次が晩めしを済ませたところへ、参吉が訪ねて来た。

「おばさん今晩は」そう云いながらさっさとあがって来、爪楊枝を使っている繁次の脇に坐った、「おめえに見せてえものがあるんだ、こいつを見てくれ」

あっけにとられている繁次の前へ、二尺に三尺ほどの紙をひろげた。母がちゃぶ台を持ってゆき、参吉は行燈を引きよせた。その紙には一脚の厨子の絵が、極彩色で描いてあった。

「おれにはよくわからねえが」と繁次が云った、「見たことのねえもんだな、文台ってやつか」

「庇二階の厨子っていうんだ」

「大名道具だな」

「紀州さまから出たんだそうだ」と参吉は昂奮して云った、「いまは本町二丁目の小村屋のもので、この下の段、下層っていうんだが、ここのところの螺鈿がいけなくなったんで、おれが五十日がかりで繕ったんだ」