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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

「小説新潮」1959(昭和34)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页

青空文庫

七

繁次はぼんやりそんなことを思った。

おひさは参吉のもの、と自分でもはっきりきめているのに、おひさが参吉の着物や羽折などを縫っていたりすると、いつものように胸が痛くなる。以前のように耐えがたいというほどではない。いっとき経てば消えてしまうが、その痛みを感じたときの、頼りないような淋しさのほうが、心に残るようになった。

明るいうちから飲みにもゆけず、浅草の奥山へでもいってみようかと思い、着替えをしているところへ参吉が来た。

「ちょっと相談があるんだが」と云って参吉は繁次のようすを見た、「――でかけるのか」

「用じゃあねえんだ、あがってくれ」

「うちへ来てくれないか」と参吉が云った、「ここじゃあ話しにくいんだ」

七

参吉はそわそわしていた。いっしょに家へいってみると、老人も女も留守だった。

「茶でも淹れようか」と参吉が云った、「ちょうど湯が沸いてるが」

「どうしたんだい」繁次は不審そうに参吉を見た、「茶だなんて、珍しいことを云うじゃねえか」

「おれだって茶ぐらい淹れるさ、まあ楽にしないか」

「それはおめえのほうだろう」と繁次は云った、「なんだか今日はようすがおかしいじゃねえか、相談てなあなんだ」