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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
「小説新潮」1959(昭和34)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页
その前後から、参吉の家がうまくいっていない、というような噂を聞くようになった。祖父の伴れこんだ女はおみちといい、もう四十を越していた。はじめ「一年も続くかどうか」といわれたくらいで、こんな裏長屋にはそぐわないようなあだっぽい女だったが、茂兵衛との仲もいいし、四十を越したとは思えないほど、いまでも若わかしいいろけをもっていた。噂のたねはそのおみちで、参吉とあやしいから茂兵衛がやきもちをやくとか、参吉がおみちを追い出そうとしているとか、まったく反対な陰口が弘まっていた。
「茂兵衛さんはもう八十だろう」という者があった、「女のほうは四十を出たといっても、あのとおりいろけたっぷりだからな、おまけに参吉のやつがまたいい男ときてるんだから、無事におさまってくわけがねえや」
「あのひと毎晩のようにせっつくんですってよ」という女房もいた、「それではおじいさんの躯がたまらないだろうって、参吉さんが出てゆけがしにするのよ、なにしろおじいさん孝行な子だったものね」
繁次はどっちの噂も信じなかった。
――参吉にはおひさがいる。
あんな女に関心を持つ筈はない、あいつの頭は仕事のことでいっぱいなんだから。