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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
「小説新潮」1959(昭和34)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页
「ちょっと飲んでいたんだ」おひさを見ると繁次はすぐに云った、「臭かったらはなれていてくれ」
「さきに云っとくわね」おひさは繁次の言葉に構わずそう云った、「あたし悪いけれど、あんたたちの話を聞いちゃったのよ」
「鈴虫の厨子のこともか」
「ええ、頼んだ道具屋さんが潰れたってことも」
「あれは贋作だ」と繁次が云った、「写しだと云ったが、道具屋と結託して鈴虫の厨子の偽物を作ったんだ、あいつはもうだめだ、参吉はいい腕を持っているが、その腕のいいのが仇になった、いまっから道具屋と組んで、名物の偽作なんぞするようじゃおしまいだ」
「だってあの人、お金が要るんでしょ」
「作りだしたのはそのまえっからだ」と繁次は怒りを抑えかねたように云った、「おめえが帰ってからおらあ云ってやった、そんな無理なことをして嫁に貰ったって、おんば日傘で育った金持の娘に、おめえの稼ぎでやりくりのできるわけがねえ、また贋作、偽物を作るということになるぜって」
「あんたは昔っからあの人が好きだったわ」
「好き以上だ、おれはあいつこそ万人に一人っていう職人になると思ってた」と繁次は云った、「――人間てもなあわからねえ、おらああいつを、おれなんぞとは段違いなやつ、いまに必ず偉くなるやつだと信じこみ、あいつがおれの友達だっていうことが自慢だった、あいつのためならどんなこと