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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
「オール讀物」1952(昭和27)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,765 字 · 19 页
つまりは、この籾を蒔いて収穫をし、それを力に便り船を待てというこの御顕示がわからぬのか」
楫取の甚八が詰まらなそうな顔でいった。
「御顕示はわかったが、夏場になれば、茅葭のような強い草でさえ立枯れする。天水は三日ごとに四半刻ほどくださるだけ。山焼けはする。灰は降る。岩山ばかりで、土気というものは更々ない。火風水土、四大の厄を受けているこの島で、いったいどこへ籾種を蒔けというのか」
「岩山はもとより承知だが、こう考えたのには訳がある。みなも、よく聞いてくれ。それはあの鳶口と大釘のことだ。籾種といっしょに、あのような道具をくだされたのは、あれで岩地を突きやわらげろという心だと察した。磐石とはいうが、こうして茅や葭が生えるのは、しょせんは、土気を含んでいるからだ。ふしぎや、同国のものばかりが一船に乗り合せ、残らず禅宗で宗旨までおなじだ。されば、みなが力を合せ、その気になって一心にやったら、この岩山が畑にならぬものでもあるまいと思うのだ」
と説いて聞かせるようにいった。みなも尤もと合点し、とても、おろそかなことではないと、籾種を伏し拝んだ。
米の始末をつけたところで、岩穴の前の平らなところをえらび、鳶口と大釘を鍬のかわりにして岩地を突き崩し、二年の間たゆまずやり、半畝ほどの畑地をつくって籾を蒔きつけたところ、思った