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じゃせいのしゅうねん

蛇性の執念

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页

青空文庫

『どうしても信じられない事なんですが、文夫を自殺させた罪は私と武雄にあるということを聞いたんですの』

『誰がそんな事を申しました? 武雄さんじゃありませんか?』

『そうですの、武雄が申しました。文夫は私と武雄との間に恋愛関係があるものと思い込み、それを訊きただしもしないで、独りで煩悶していたんですって、それこそ全くの誤解でしたが、ああいう善良な人だったものですから、自分独りの胸に秘めてただ苦しみぬいた揚句、私や武雄を幸福にさせるために自殺したんだと申しますの、そんな馬鹿々々しい事と最初は気にもかけなかったんですけれど、段々考えてみますと、満更武雄のでたらめばかりでもなさそうな節もございますの。文夫の日記を見ても、何か煩悶があったのは事実でございます。それが私の事に関してだかどうかは分りませんけれども、また武雄はこんな事も申しましたの。私と武雄は深い関係があるのだと、結婚直後に何人かが文夫に密告したそうですの、私も見ましたが、文夫の本箱から出たという差出人無名の手紙にもそんな事が書いてございました。死ぬ前日文夫が武雄に申したそうです、僕に万一の事があった場合、綾子の事は君に頼むよ、と冗談のように云ったのが、今になると遺言のような気がして責任を感じると申しました。