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じゃせいのしゅうねん

蛇性の執念

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页

青空文庫

だからどんなお方かと思っていたの。こんないいお写真があるんなら何故アルバムにはっておかないんでしょう。お母様も御一緒だしね。私は叔父様のお写真は家には一枚もないものかと思ってたわ』

『はい。一枚もないはずなんでございます。殊にこのお写真はどうしてもこのお邸にある理がないのでございます。まさかお写真がひとりで歩いて参ったんでもございますまいに――』

綾子さんは笑い出しました。それに釣られて私も笑いました。しかしお梶さんだけは大真面目なんです。のみならず何か怖しい幻にでも襲われているように、息をはずませながら何となく落付を失っているようなのです。

私はお梶さんの様子を注意深く見ながら、綾子さんに云いました。

『文夫さんがどこからか持っていらしたんではありませんの?』

『それなら必ず私に見せますわ』

と綾子さんは直ぐに否定しました。

『すると文夫さんがお亡くなりになった後に、どなたかがお置きになったんですわね』

綾子さんは首を振って、

『あの後、お書斎には私の外、絶対に誰も入れませんでしたわ』

お梶さんは黙って考えつづけています。写真がある以上、何人か入ったと見なければなりません。