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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页
型の通りお墓の前に香花を捧げ、本堂に立寄られるまでは無事でございましたが、今度は本堂裏のお位牌堂にお参りしたいと仰しゃるのでございます。人気のないお寺は華やかに飾った本堂でも、余りいい気持のものではございませんが、お位牌堂ときては陰気で、薄暗くて、湿めっぽくて、まるで地獄の入口のような気がいたします。
已を得ず後に従いて参りますと、床は塵垢の上に鼠の糞、時々顔を撫でるのは蜘蛛の巣でございます、人の気配に驚いて逃げ廻る鼠の音にも私は縮み上りました。小さい窓からさし込む陽の光がその一室を一層青白い寂しいものにして居ります。大奥様は平気で歩いていらっしゃいましたが、中ほどの右側を指して、突然頓狂なお声で仰しゃいました。
「あすこに旦那様がいらっしゃる」
私はゾッといたしました。大奥様はその前にべたりとお座りになり、私に外へ往って待っていろと目くばせ遊ばしますのです。
私はいいつけ通り入口の外へ出ましたが、気になりますので絶えず注意いたして居ました。大奥様は始めさめざめと泣いていらっしゃいましたが、時々大旦那様のお名をお呼びになるお声が聞えました。終には歯をきしるようなお調子で「お許し下さい! お許し下さい!」