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はちがだんごをこしらえるはなし
蜂が団子をこしらえる話
寺田 寅彦
「解放」1921(大正10)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,564 字 · 8 页
こんな虫がだんだんに数を増して、それが皆人間などと平等な生存の権利を主張するようになったらどうだろう。そうなれば虫のためには人間の方が害虫であるに相違ない。薔薇の花でも何でも虫のためには必要なる栄養物質であるのを、人間が無用な娯楽のために独占しようとして虫をひねり潰すのは、虫から見ればかなり暴虐な事かもしれない。
ある日の昼食のあとで庭へ出て、いちばん毛虫の多くついた薔薇を見に行った。そして見当り次第に箸でつまんで処分していた。人間の立場からどうもこうしなければ仕方がないのである。
真円く拡がった薔薇の枝の冠の上に土色をした蜥蜴が一疋横たわっていた。じっとしていわゆる甲良を干しているという様子であった。しかしおそらくそんな生温かい享楽のためではなくて、これもまたもっとせっぱつまった生存の権利を主張するために何かを期待して狙っていたに相違ない。時々のそのそ這い出しては、またじっとして意地のわるそうな眼を光らせている。事によるとこれは青虫でも捜しているのではないかと思われた、もしそうだとすると有難い訳だと思った。
たちまち眼の前に一つの争闘の活劇が起った。