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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
それからポケットからピストルを出して手に握ると、人口の扉の錠を外した。そして床に腹匍いせんばかりに跼んで、扉をしずかに開いてみた。もし廊下に何者かの人影を見つけたら、そのときはピストルに物を云わせて、相手の足許を射抜くつもりだった。
「なアんだ。誰もいやしない」
廊下には、猫一匹いなかった。それでも彼は念のため、廊下に出て、窓を調べてみた。窓には内側からキチンと錠が下りていた。しかし窓はしきりにガタガタと鳴っていた。真暗な外には、どうやら風が出てきたらしい。帆村はホッと息をついて、自分の部屋に帰っていった。
風は目に見えるように次第に強くなり、ヒューッと呻り声をあげて廂を吹きぬけてゆくのが聞えた。
こうしてひとりでいると、まるで牢獄のうちに監禁されたまま、悪魔が口から吐きだす嵐のなかに吹き飛ばされてゆくような心細さが湧いてくるのであった。
チリチリチリ、チリン。
突然、電鈴が鳴った。電話だ。
それは夢でも幻想でもなかった。たしかに室内電話が鳴ったのである。深夜の電話! 一体どこから掛ってきたのであろう。
帆村は受話器をとりあげた。
「帆村君かネ」
「そうです。