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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

貴方は誰?」

帆村の表情がキッと硬ばり、彼の右手がポケットのピストルを探った。

「こっちはお馴染の蠅男さ」

「なに、蠅男?」

蠅男がまた電話をかけてきたのだ。村松検事の声とは全然違う。帆村は、蠅男に対する恐ろしさよりは、この蠅男の電話を、ぜひとも水田検事に聞かせてやりたかった。

「どうだネ、帆村君。今夜の殺人事件は、君の気に入ったかネ」

「貴様が殺ったんだナ。塩田先生をどういう方法で殺したんだ。村松検事は貴様のために、手錠を嵌められているんだぞ」

「うふふふ。検事が縛られているなんて面白いじゃないか」と蠅男は憎々しげに笑った。「どう調べたって、検事が殺ったとしか思えないところが気に入ったろう。口惜しかったら、それをお前の手でひっくりかえしてみろ。だが、あれも貴様への最後の警告なんだぞ。この上、まだ俺の仕事の邪魔をするんだったら、そのときは貴様が吠え面をかく番になるぞ。よく考えてみろ。もう電話はかけない。この次は直接行動で、目に物を見せてくれるわ。うふふふ」

「オイ待て、蠅男!」

だが、この刹那に、電話はプツリと切れてしまった。

神出鬼没とは、この蠅男のことだろう。