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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

カオルも山治も、蠅男らしい人物がこの家に出入していない旨を誓った。

警戒中の警官も、同じことを証言した。

お手伝いさんが一人と、派出婦が一人といるが、お手伝いさんも知らぬと答えた。このお手伝いさんは城の崎の在から来ている人で、先日まで近所の下宿で働いていた身許確実な女だと知れた。

派出婦は、生憎外出していた。これは身許もハッキリしていなかった。年齢の頃は二十三、四。名前は田鶴子といった。顔は丸顔だという。

「田鶴子――というんだネ」

この田鶴子なる派出婦は、一行が到着する直前、ちょっと薬屋に買物にゆくといって出ていったそうだが、それがなかなか帰って来なかった。そこで警官の一人を、その薬局へ派遣して調べさせることにした。

間もなくその警官が帰ってきて、

「近所の薬屋を四、五件調べてみましたんやけれど、どの家でも、そんな女子は来まへんという返事だす。けったいなことですなア」

帆村はそれを聞くと、ポンと膝を叩いた。

「呀ッ。わかりましたよ。その田鶴子という派出婦は、もう二度とこの家にかえってきませんよ」

「なぜだい」検事が聞いた。

「いや、その田鶴子という派出婦は、蠅男の情婦のお竜が化けこんでいたに違いありません。