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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
そして足早につつーッと走ってプールのある広間に駆けこんだ。
「皆さん、蠅男をつかまえましたッ」
というなり帆村はそのまま、ザンブリと熱湯満々たるプールの中にとびこんだ。
「うわーッ」
と、これは蠅男の悲鳴だ。
帆村の作戦は大成功をおさめた。義足義手をつけては天下無敵の蠅男も、帆村に抱きしめられて暴れるたびに、ズブリズブリと水雑炊ならぬ湯雑炊をくらってはたまらない。二度、三度とそれをくりかえしているうちに、蠅男は、だんだんと温和しくなっていった。
「さあ皆さん。住吉署に電話をかけて下さい。署長さんに、帆村がここで蠅男をおさえていると伝えて下さい」
この場の唐突な乱闘に、プールから飛びあがって呆然としていた入浴客は、ここに始めて、目の前の活劇が、いま全市を震駭させている稀代の怪魔蠅男の捕物であったと知って、吾れにかえって大騒ぎをはじめた。
帆村が、この何処に置きようもない重い肉塊を抱えて、腕がぬけそうに疲れてきたときに、やっと正木署長をはじめ、警官の一隊がドヤドヤと駆けこんでくれた。
「どうした帆村君。いよいよ蠅男を捕えよったかッ」
「はア、ここに抱いて居ります」