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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
すみません。ヤエちゃんが気分が悪いそうですから、苦しかったら、やすんでいるようにと、カギを渡しといたんです」
「気分が悪いッて? 笑わしちゃア、いけないよ。あんたの留守に、お客をくわえこんで商売してるじゃないか」
さすがに意外だったらしく、放二は声をのんで、うなだれた。
「私ゃ、あんたに部屋をかしてるが、パンパンにかしてるんじゃないんだ。パンパン宿にかすんなら、貸し様があらアね」
「北川さんは神様みたいな人ですよ。悪気があってじゃないんだから、カンニンしてあげて下さいな」
と、オデン屋のオヤジがとりなした。
放二の連れが、いつもの若い連中でなく、年配の長平たちだから、管理人も意外だったらしい。ジロジロと三人を眺めまわしたあげく、だまったまま、ふりむいて、ひッこんでしまった。
「あんなに言うことないね。このアパートにゃ、パンパンもいるんだ。みんな店をひらいてらアな」
「ぼくの部屋代が滞りがちだからです」
と、放二は苦笑してオヤジにだけ聞えるように言ったが、耳の鋭い長平は、状況判断を加算して、ききとることができた。
世間の激浪に損われた跡がミジンも見えない貴公子のようなこの青年に、彼の過去がすべてそうであったように、現在も冷酷無情な現実がヒシヒシとりまいていることを、はじめて長平は知ることができた。