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ふくめんのぶとうしゃ

覆面の舞踏者

江戸川 乱歩

「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页

青空文庫

秘密結社とはいい条、別段悪事を企らむ訳ではありませんから、会のことは、会員の細君達にも、云わず語らずの間に知れ渡っている訳です。それがどういう種類の会であるかは分らなくとも、兎も角、井関さんを中心にして月に一度ずつ集会を催すということだけは、細君達も知っていたのです。

いつものことで、井関さんは、薄くなった頭を掻きながら、恵比須様のようにニコニコして、客間へ入って来ました。彼はデップリ太った五十男で、そんな子供らしい会などにはまるで縁のなさそうな様子をしているのです。それが、如何にも行儀よく、キチンと座蒲団の上へ坐って、さて、あたりをキョロキョロ見廻しながら、声を低めて、会の用談にとりかかるのでした。

「今度の二十日の打合せですがね。一つ、今までとは、がらりと風の変ったことをやろうと思うのですよ。というのは、仮面舞踏会なのです。十七人の会員に対して、同じ人数の婦人を招きまして、お互に相手の顔を知らずに、男女が組んで踊ろうというのです。へへへへ、どうです。一寸面白うがしょう。で、男も女も、精々仮装をこらして頂いて、できるだけ、あれがあの人だと分らないようにするのです。