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しんらんのすいみゃく

親鸞の水脈

吉川 英治

「大法輪 十月号 二十五周年記念特別号」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,786 字 · 8 页

青空文庫

僕は本紙の「日曜付録」を一人で取材もし編集もしていたわけですが、それに童話を書いたり、訪問記事を書いたりしておる上に、あるとき、社長から僕へ直接いきなり『「親鸞」を書け』といわれ、それが新聞小説の処女作になった僕の「親鸞」なんです。特に親鸞研究に没頭する準備もなく社命ぜひなく社の文庫や図書館通いをあてに始めたのですからまことに盲ヘビにおじざるものです。とにかく毎日新聞面に一段というと相当の分量ですが、それを一方で訪問記事を書いたり、学芸部の仕事もしながら書くのですから、毎朝みんなより二、三時間ずつは早く出社したものです。それも今のように原稿用紙へちゃんと書くのでなくて、デスク用のザラ紙に鉛筆で時間に追われながら毎朝毎朝書き続けるのです。時間になると工場から植字の少年がとりにきて、書けたのを一枚一枚僕がまだ読み返しもしないうちにうしろからのぞいて持って行ってしまうといったようなものでした。

然し読者はそんなことなど仮借しては読みません。よく本願寺の若いお坊さんなどが社へ訪ねて来て議論をまくしたてる。又、たちどころに親鸞研究に熱心な学究や信者のお小言がくるし、社内にもその時分渋川玄耳氏だの岡鬼太郎氏などの博学も多かったものですから、ゲラ刷りが出るや否や『ここはおかしい。