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しんらんのすいみゃく
親鸞の水脈
吉川 英治
「大法輪 十月号 二十五周年記念特別号」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,786 字 · 8 页
ここの考証はちがっている』と編集局の中で毎日の批判です。赤面は度々ですし無我夢中で書かされておりました。けれどそれが僕自身にとってはたいへんいい勉強になりました。
元々、作家生活に入るなどは、夢にも思っていなかったんです。病母弟妹を養うためにただ孜々と働いていただけなんです。それが稀社命で親鸞というような宗教上の偉大な人間像に盲目的にぶつかって、そんな仕事をするハメになったというのも僕には大きな慈悲に出会ったようなものです。これで自分がもっとその恩施を汲みとる人間になりえていたら法縁といってもいいかもしれません。ところが「親鸞」はご承知のような愚作ですし、老来まだこんな態ですから、何ともよき法縁を可惜にしていたと思っています。
それでも四十歳を過ぎてから五社連盟の新聞紙上に「親鸞」を書き直したのです。そして自分の人生体験が多少とも深まり、人生観や宗教観も固まって五十歳か六十歳になったならば、もう一ぺん親鸞という人間像にぶちあたって書き直すということをそのときの単行本の序文に書いておきました。しかし、それは今日までつまり三度目の書き直しは果されてはいないのです。